第10章

第10章『スマッジには無理?』の挿絵

スマッジには無理?

ひとりでは、どうしても向き合えないこともある。

テザーは羽根をケースの前に置き、ひざの上で両手を組んだ。

「ルールは簡単。足の裏を、しっかりくすぐられる。いつでも止めていい」少し間を置いた。「でも、止めたら……失格」

スマッジは口を開いた。

「きみたちが本当に、心から、どうしても聖域へ行きたいのなら——言っているとおり、それがふたりにとって大切なのなら——何も問題はないはず。そうだろう?」

沈黙。

ひどく居心地の悪い沈黙だった。

スマッジは羽根を見た。ビスケットはクッションの奥へ、ほんの少し深くもぐりこんだ。

テザーは組んでいた手をほどき、羽根を持ち上げた。「さて」と、ついに言った。「どちらが受ける?」

スマッジはテザーを見た。テザーは羽根を見た。ビスケットはふたりを見て、この件には絶対に関わりたくないと思った。

「わかった、わかった」スマッジが言った。「ぼくがやる」

テザーは首をかしげた。「本当に?」

「もちろん」まるで自分の足が、くすぐりの効かない鋼鉄でできているかのように、自信たっぷりに答えた。

ビスケットはたいへん心配そうだった。それが完全なうそだと知っていたからだ。犬のしっぽでちょうどよく足をくすぐれば、スマッジなどすぐに逃げ出す。ビスケットは何度もやったことがある。とくに、ソファをひとりじめしたいときに。

それでもスマッジは靴下を脱ぎ、たいへんな儀式のように深く座って足を上げた。かなり不安ではあったものの、ビスケットも横へ座り、興味津々で、精いっぱい応援するつもりで見守った。

テザーは何も言わなかった。ただ羽根を持ち上げ、右手から左手へ、ゆっくり渡した。

まだ足に触れてもいないのに、スマッジは笑った。

最初は小さな笑み。次に、もう少し大きな笑み。やがて肩が揺れ始めた。

そして顔全体がくしゃりとつぶれ、とてつもなく大きな笑い声が止めようもなく飛び出した。「あはははは!」スマッジはおなかを抱え、クッションの上で横向きに丸まった。

「やめて、やめて」息を切らして言った。「むり——もうむり——」

テザーは羽根を下げた。「スマッジ」

「わかってる、わかってる——」スマッジは起き上がり、涙をぬぐって気持ちを整えた。「よし。準備できた。今度こそ本当に準備できた」

テザーはもう一度、羽根を上げた。

スマッジは一秒ほど耐えたあと、また笑い出した。

「やめて!」

「まだ始めていない」

「わかってる!」スマッジは唇をぎゅっと結んだ。「ただ——考えただけで。もうだめなんだ」

「スマッジ」テザーは責めるでもなく言った。「まだ実際には、一度もくすぐっていない。それはわかっているね」

スマッジは「うん」と言おうとしたが、笑いすぎてまともに答えられなかった。

「ほんの少しも」とテザーは続けた。

「わかってる」

「足に触れていないだけではない。今、羽根は」目の前で確かめられるように持ち上げた。「きみの足そのものから、一メートル近く離れている」

「それは知ってる」スマッジは今や両足を体の下へしまいこんで座っていた。

「やりたいんだ」スマッジは言った。それが本心なのは、はっきりしていた。顔はまじめで、心からそう願っていた。「本当に、本当に、心の底からやりたい。ただ……」

言葉を止め、ビスケットを見た。それは、もしビスケットがお菓子のビスケットだったなら、今から食べられるとわかる種類の目つきだった。

ビスケットは最初、意味がわからなかった。首をかしげる。スマッジを見る。羽根を見る。もう一度スマッジを見る。

そして、理解した。

スマッジは笑った。とんでもないお願いをする気だと、自分でもよくわかっている者の、あたたかく希望に満ちた笑顔だった。横の椅子をやさしくぽんぽんたたいた。

「ビスケット、ちょっとだけ……ここに座ってみたら? 楽にしてさ。ただ——」

ビスケットは、もう後ずさりしていた。

「おいで」スマッジはたちまち、散歩やおやつなど、本当にすばらしいもののためだけに使う特別な声へ切り替えた。

「いい子だ。さすがビスケット。ただの椅子だよ。いい椅子。やさしい椅子」

ありがとうございます

無料公開分はここまでです。

でも、スマッジとビスケットの冒険はまだ始まったばかりです。これから、さらに多くの試練や道まちがい、あやしい旅人たちが待っています。そしてふたりは、まだシンメトリーの聖域へたどり着いていません。

『スマッジの大きな夢』について詳しく知り、完全版の情報やEPUBの案内を見るには、下の本のページをご覧ください。